坂のある街

dixannees2008-11-12


今回店を始める場所は坂のある街です。
今住んでいる町も坂の多いところですが、
ずっと生まれ育ってきた場所なので、
あまりこの町の坂に対しては思い入れが持てません。


でも、なぜか私は坂のある街が好きなのです。




昔、深夜映画で見た70年代くらいの日本映画の舞台が神戸でした。
それは小林薫さんと室井滋さんが出ていた
青春映画に分類されそうなマイナー(失礼…)な作品。


でもなぜか心に残っているんですね。
そして、ストーリーとかも殆ど忘れてしまったし、
坂が出てきていたかどうかも覚えていない。
それでも、なんとなくあの映画も
私が坂が好きになった理由の一つのように思えます。
へんな話なんですけれど…。


さらに映画の影響と言うと、
薬師丸ひろ子さんの「Wの悲劇」。
たしかあれも神戸が舞台ではなかったかと思うのですが…
(うーん、これは違うような気がする)。
ただ、あの映画の舞台も坂とそして古い洋館が出てきていて
すごくそれが印象に残ったのを覚えています。
あぁいう場所に住みたいと即座に思ったことを。


その後、実際に神戸で住もうと思ったことがありましたが、
いろんな条件を考えてその時はやめましたけど…。


さらに映画の影響(ってほどでもないのですが…)でいうと、
時をかける少女」を見たことがありました。
あの映画は尾道が舞台でしたが、
よく似た感じの映画で長崎が舞台の映画があったかと思います。
若しくは、あの映画内でどうしても構図的に長崎の坂が使いたくて
その部分だけ長崎で撮影したというエピソードを読んだか……。


全然あやふやな記憶ですが、
とりあえず、長崎の坂の風景が
すごくいい感じだったのを覚えています。
そして、尾道は実際に旅行したときに、
やっぱりあの狭い路地が入り組んでいる感じや、
山の斜面に拓けた町であるがゆえの坂のある町の風景が
非常に自分の感性にピッタリとはまった感じがしたのを
覚えています。
なんだかホッとするというか、
人間味のある、味のある街の姿というか……。
論理的な説明はできませんが、
とにかく感覚としてそんな感じを受けて、
それを私が好んだということです。


さらに、“坂”とともに好きなもの、ホッとするものに、
“古さ”があります。


古いものはそれがあるだけで、
なぜか落ち着きます。安心します。ホッとできます。
新しいピカピカのものの方がいいものもあります。
全て古いものがいいというわけではありませんが、
比率で言うと断然古いもののほうが好きです。


“もの”というと何かの物体かと思いますが、
それももちろん含まれますが、
決してそれだけではなく、街の古さといったものも含みます。
古い街が好きです。


安直に人情味溢れるところが…とはならないのですが、
それでも情が無いよりは有ったほうが断然いいと思います。
つかず離れずの加減が非常に難しいのですけれど……。
あまりべったりした情はちょっと苦手ですから…。


そんなわけで、古い町である京都も好きです。
好きで住んだこともあります。


  * * *


そして、今回店を出す場所探しも古い街をメインに探しました。
“今風の”とか“流行の”とか“中心的な”とかではなく、
その周辺にあって地味だけどなんだか気になるエリア
で探していました。


そういう場所は自然と古い建物が残っていたり、
町自体が古かったり、なんだか落ち着ける場所ばかりでした。


そして、決定した場所はまさしく古い町。
昔ながらの商店街があり、長屋があり、
そして、私の好きな坂がある町です。


自分が腰を据えて何かを取り組む場所が居心地悪いなんて
それだけで先行きが見えてくる気がします。
その点、今の場所を見つけられたことはとてもラッキーです。


このラッキーを実に変えていくのは自分の努力と多少の運次第。
頑張る気は十二分にあるのですが、
いかんせん、結論がなかなか出て来ず、
足踏み状態を強いられています。


なんとか、先へ進めますように。
今は祈るだけの毎日です。